国の行先

  • 立候補

 下北の映画館に数年ぶりに行くと30分前にはもう行列、立ち見しかなく断念し、6時間後の東中野で鑑賞。こちらは1時間前でもう補助席しかなかった(開演後、入場制限で入れなかった人がスタッフともめていた)100席も満たない映画館が連日連夜1回の公開に集まるそうで平日でも満席だという、それが今回見た映画、立候補である。

 大阪府知事選に立候補したマック赤坂を中心に4人の泡沫候補を追うドキュメンタリー。なぜ彼らは勝つ見込みのない、負ける選挙に300万円も払い出馬するのか?それを追いつつ、現代日本の選挙、政治、世間を切り裂いた、今年、現時点で見てきた中で最もインパクトがあり、心揺さぶられる作品だった。舞台挨拶でもなんでもないのに、鑑賞後、場内に拍手がなる光景をひさびさに見ることが出来た。
 日本スマイル党マック赤坂、黙っていればスーツの似合うナイスミドルだが奇抜な発言が彼のイメージをずんずん崩していく。それは時に滑稽なのだが、それはどこまで本質なのだろう?奇行の合間に見せる正論はまさしく現在の日本の選挙、そして選挙報道に対する正しい反論であり、京都大学学祭に乗りつけて実行委員の女子大生を恫喝(おそらくここは演出でこの子のシーンを抜粋したのだろう)したり怒り出したりと駄々っ子のように振舞うこともある。マック赤坂の息子が出てきて選挙にでる父にコメントしたり、他候補の現場に乗り込んだり、見ていくにつれ人間マック赤坂に魅了されていく自分がいた。

 そして泡沫候補といえば有名どころの羽柴秀吉、そして動画150万回再生の外山恒一にインタビューを撮っている。特に外山恒一は今回の驚きのひとつだった。インタビューを受ける外山は選挙放送とは違い、理論整然と質問に答えていく。彼の言葉で印象的なのはインターネットへの否定的な姿勢。それは、すぐにネタとして消費してしまうネットの特性に対して、自分の主張である消費社会に対するアンチテーゼと相容れない部分であり、それがあの演出された選挙放送だったのだと気づかされ、あの放送を見て150万回も再生し、笑っているこちらは向こうの狙い通りに衆愚だったのかと考えさせられた。
 そしてラストシーンは阿部フィーバーから見える今の日本、あれは完全に意図的にアングル、シーンを決めているが正しくあるものを連想させる構図だった。日本国旗を振り、中指を立てながら写メを撮り、選挙をなめるなと売国奴コールをしながらマック赤坂にブーイングを浴びせる群集とスマイルで返すマック赤坂、本当に選挙をなめてるのはどっちなんだ?ラストシーンはあまりにも衝撃的なカットで終わっていった。

兎に角、参院選前にはぜひ、見るべき映画。ハリウッドがあと何年VFX研究しても撮れない映像と熱気と感動と考察を与えてくれる傑作ドキュメンタリーだった。

http://ritsukouho.com/

ただ、現在選挙のため、画像、映画の広報活動等が選挙法に引っかかり、宣伝ができない状況のようで、HPも情報が大分削除されてしまった。