人の好奇心と正義感と巨悪

 10年住んできて、比較的治安のよい町だったが、凶悪事件が起こった。いつも使う駅から200mの地点で起こった犯罪であり、逃走経路は帰路と交差し、逮捕された場所は帰路途中の目が届く位置だった。
 まず、体格も劣る相手に得物を使い襲うという下衆の極みのような事件であり、ニュースで日本人とやたら連呼していたのは犯人がフィリピン系ハーフだったことによってくるのは後々わかってくる事実だった。初期報道では重傷と報道されており重体ではないので命は助かったのかなと思っていた矢先の死亡報道は本当に心を締め付ける。まだ、18歳のこれからの未来ある命が奪われるのは本当にやりきれない。

 ネットでは早速被害者のさらし上げが始まり、それこそ胸糞が悪くなるような書き込みもちらほら見える。人の好奇心と欲とゆがんだ正義感は最近見た映画"巨悪"の中でも描かれていたが、書いている本人はあの強行に及んだ映画の登場人物のような焦点が狭い己の倫理観で動いているんだろう。そりゃ、あんなこと書き込んだりしてたら、ネット規制されるわなぁ。
 どうも最近はやってはいけないというセーフティが馬鹿になってるように進む事柄が多い。それこそTwitterで自分の罪をさらしたり、相手をぐうの音もでないとこまで追い込んでしまったり。やってよいことと悪いことと、あいまいな境目しかないのだけど本当にやってしまったらもうお互いの破滅しかない事柄につっこんでしまう事例がネットというツールを媒介にして世の中にあっという間に広まってきた感がある。

少なくとも故人を貶めようとするものたちに何らかの天罰が下ればよいなと思うが、世の中はそううまくはいかないのだろう。そしてこの事件も年末ごろには忘れ去られるのだろう。少なくとも今だけは故人が安らかに逝けることを願うしかない。