It is written.

http://slumdog.gyao.jp/
 本来なら飲み会のはずが、メールが届いていないと言うことで不参加扱いとなり、映画を見に行く。世の中のすべてのものはすでに決まっている、そしてそれを運命と言うのであれば、メールが届かず不参加となり映画を見に行くことになったのも運命だったのであろう。
 ダニーボイル久々のヒット作となったスラムドッグの舞台はインド、日本でも大ヒットしたクイズ番組ミリオネアに出場したジャマールが不正を働いたのではないかという疑いからジャマールの半生と番組の問題がシンクロしていく。インドスター、イスラムヒンドゥーの対立(勇午のインド編を読むと時代背景が理解しやすい)、児童誘拐、ギャング、経済成長と携帯電話と、今のインドの光と闇の部分を描きながら、話は男女が幾たび出会うためのラブストーリーという王道なファンタジーである。3時間という長丁場を一切感じさせないストーリーテリングとOPのボイル監督らしいカメラワーク、音楽も良かった、さすがアカデミー賞作品といった感じか。それにしても運命という言葉はインドにはものすごくマッチする。
 インドはまだ多くの問題をはらんでおり、ボンベイがムンバイになってもみなが幸福にならず、相変わらず貧富の差の大きい国ではある。この物語はあくまで"ファンタジー"であり、ハッピーエンドを迎えるストーリーに、ジャマールのピンチから、いやらしいみのもんたのような司会者に一泡吹かせる瞬間にこのつらい現実を忘れさせてくれる力があった。それこそ映画の中でミリオネアを見る観客は映画を見ている自分たちであり、劇中の観衆がジャマールに希望を乗せていたように、映画を見る自分たちはこの弱者が強者に勝ち、最後にハッピーエンドになるという"ファンタジー"に一時酔いしれたのだろう。

勇午 インド編(下) (講談社漫画文庫)

勇午 インド編(下) (講談社漫画文庫)